人生脚本その2

 また母が私に頼み事。旅行に行きたいから、人数分の宿を予約して、と。「面倒くさい」という感情が湧いてきた。

 

 こだわりの強い私は、たとえ自分が参加しない旅行だったとしても、コスパよく、立地よく、口コミ良く・・・と、完璧なプランを探し続けるだろう。妥協できず、眼精疲労と闘いながら検索し続ける自分の姿が過る。

 

 その瞬間、不思議と「平日の空いている時間に、旅行会社の窓口に行って、〇月〇日、部屋数、予算〇円、旅館かホテルか・・・・・って優先順位順に希望を言えば、簡単に探してその場で予約できるよ」と話している私がいた。

 

 母は以前、携帯トラブルでも、窓口に行くことを勧めたら、今は分からなくなると自らそこへ足を運べるようになっていた。旅行だって、自分で好きに予約して行けた方が楽しいはず、と常々考えていた。でも、どこかで母を見捨てるような、そんな気持ちもあったのだ。

 

 あっさり、「じゃあ今から行ってみる!」と出かけ、すぐに予約できたようだった。その声は満足気で、私もとても幸せな気持ちになれた。母を見捨てることにはならなかった。

 

 ふと、最近読んだ「子どもの心のコーチング」の内容が頭を過った。父なき今、母が一人で楽しく生きていくためにも、「コーチング」が必要なのだと感じた。同時に、私自身の人生脚本を捨て、新たな人生脚本に塗り替える必要がある。母が自立できるように促すことは、母を見捨てることではない。私が気に病み、無理して感情を抑えながら面倒を見る必要はない。